2011年10月31日月曜日

第45回日本側弯症学会に参加しました。

第45回日本側弯症学会が2011年10月26日から27日まで福岡県久留米市でありました。側弯症学会は、伝統と権威のある学会で、小児の脊柱変形の原因究明から、疫学、学校検診、保存治療、手術治療まで基礎的研究から臨床にいたるまで幅広いテーマについて、発表や討論がなされていました。当教室(大阪市立大学)からは、私と寺井先生、大阪市立総合医療センターから、小西先生、松村先生、加藤先生、獨協医大に現在おられます並川先生が参加されました。
一般の方も目にする可能性のあるブログなので少し側弯症(そくわんしょう)のお話をしたいと思います。側弯症は、脊柱がねじれながら(回旋しながら)側方に曲がる姿勢異常の事です。人間の体はもともと完全に左右にできてはいないので、少しの曲がりでは身体の“個性”の範囲で問題ないと思いますが、曲がりの角度もある程度以上に進むと、変形が目立って周りから指摘されるようになったりして精神的な苦痛を感じるようになります。肉体的な症状(腰痛とか背部痛とか)は、案外感じる事は少ないように思います。“普段の姿勢が悪いからだ”と親から指摘される子供さんを多く見受けられますが、姿勢に気を付けることは大変重要なことですが、いつも猫背でいることが真の側弯の原因になっているわけではありません。
さて、高血圧の患者さんは血圧を、糖尿病の患者さんは血糖値を参考にして治療を行うように、側弯症の患者さんは、背骨の曲がり具合(コブ角といいます)と年齢(骨成熟度)とを考慮しながら治療を行います。治療方針決定の目安としては、コブ角が①10度未満はほぼ正常(身体の個性の範囲)、②10-24度は経過観察が必要な角度、③25度以上は装具治療を考慮する角度、④45度以上は手術治療を考慮する角度と考えています。この角度は目安であって、一番重要なことは経時的は変化です。受診時の年齢や経時的なコブ角の変化をみて25度より小さい角度でも装具療法を勧める場合もありますし、年齢によっては装具不要と判断する場合もあります。最も多い特発性側弯症(背骨の姿勢異常以外に病気のない側弯症)は、思春期ごろから目立つようになり、身体の発育や成長が止まるまで進行し続ける傾向があります。ですので、成人になるまでに45度以上に進行しないようにするのが我々の一つの大きな仕事となります。40-55度以上では成人になっても年に1-2度の割合で進行すると考えられ、女性では妊娠や出産に際して、背骨の曲がりが増悪することがあって最近では手術治療を勧めることが多くなってきています。今回の学会でも手術療法の工夫や矯正固定を行う背骨の範囲をどのように決定するか、50歳ぐらい以上になってから症状を出すようになった成人側弯症に関してどのように対応するのかについて熱い議論がなされていました。
側弯症の治療については、治療者(整形外科医、整骨院、鍼灸)の立場による意見の違いから、情報化社会の昨今いろいろな情報があふれ、患者さん側に混乱が生じている面もあると思います。お困りの患者さんがおられました、ぜひご相談くださいませ。
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大阪市立大学整形外科 
脊椎グループ 病院講師 豊田宏光


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